「死にゆく人の心に寄り添う」を読んで

「NHKクローズアップ現代+」で紹介された玉置妙憂さんの「死にゆく人の心に寄り添うー医療と宗教の間のケア」を読みました。

現役看護師である彼女は、「これ以上治療を続けない。」と言う夫を自宅で看取りました。治らないし、体が受け付けないにも関わらず最期まで治療を続け、かえって本人を苦しませることになる病院死とは全く違う、食べられなくなって自然のままに自分の体をきれいな状態にする穏やかな最期に価値観が変わり、出家して女性僧侶になりました。

半世紀前は、医療も今ほど進んでいなかったので自宅で見送るのが普通で、家族・親族・地域で見送っていたので、辛い中にも『こういうものだ』と教えてくれる人もいて安心感がありました。

現代は、生まれてくるのも死ぬのも命の現場は病院で、死にゆく本人も初めてのことだし、家族も看取る経験もないので、どうしたら良いのかと戸惑うのは当然のことです。見送った後も「あれで喜んでくれただろうか。もっとこうすれば良かったのではないか。」とグリーフ状態が続く人も多いのです。

彼女は、看護師として医療に従事して体のケアをし、臨床宗教師として死にゆく人そしてその家族の心に寄り添いケアしています。助けてもらった人は本当に満足だと思います。

昔は、地域で行っていた人生のイベントが、結婚式は式場、病気は病院、葬儀は葬儀社と専門家に任せるようになっています。看取りにもサポートしてくれる専門家が必要となり、臨床宗教師や前回ブログの『みとりし』も誕生しているのでしょう。

高齢化はどんどん進み、すでに多死社会に入っています。専門家を頼るのも必要なことではありますが、みんなが頼れる訳ではありません。事前に自分で知識を持つのも大切だと思います。

この世に生きているすべての生き物は、必ず終わりを迎えます。永遠の命などありえないのです。そのことを考えていない人が多い。「縁起でもない」と気付かないふりをしています。

QOD(Quality of die 死の質)。2010年、イギリスの雑誌『エコノミスト』が提唱した概念です。『終わりよければ全て良し」というではありませんか。「若いから大丈夫」「元気だから大丈夫」「私に限って大丈夫」いやいや、いつ何が起こるか分かりませんよ。「病院死はどうなる。」「自然死はどうなる」という知識を持って、自分はどんなゴール迎えたいのか、そのためにはどこを選択するべきなのかを考えましょう。そして、家族親族と命の話し合いをしましょう。体の状態が変わり、気持ちが変わったらまた話し合えば良いのです。そして、幸せなゴールを迎えましょう。遅かれ早かれ必ずその時はやってきます。

 

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