延命治療とは8 輸血・強力な抗生物質

こんにちは! 

私は、父の見送りから、命の尊厳を守るため、延命治療の説明絵本「桜のようにいきたい」を作成し、延命治療についてお話をしています。

いつもお話しますが、元気になって普通の生活に戻っていける人にとっては普通の治療でも、もう治る見込みもなく苦しい時間を引き延ばすだけの状態になった人への治療は延命治療です。

今回も前回に引き続き、老衰状態になったよしこおばあちゃんの病棟の別の部屋の方の治療の話です。

人生の最終段階の方ばかりの病棟なので、いろんなことが起こります。

ある部屋では、輸血が行われていました。 輸血は、病気や薬の影響などで十分に血液をつくることができなくなったり、事故や手術などで大量出血したに必要となり、たくさんの方の命を救います。ほとんどの輸血が安全に問題なく行われます。しかし、輸血は他人の血を自分の体に入れるわけですから、体質に合わなかったり、病気がうつってしまったりする可能性もあります。輸血中や輸血後すぐに症状の出る副作用ばかりでなく、輸血から数日後、数週間後、数年から20年30年後に問題になる副作用もあるそうです。比較的多い副作用として発熱やじんましんなどがあります。最もまれな反応としては、感染症や大量輸血の合併症(例えば、血液凝固不良、体温低下、カルシウムやカリウムの濃度低下)が出ることもあります。

しかし、ここは老衰期に見える方ばかりの病棟です。血液疾患や出血のみならず,慢性炎症など,さまざまな原因によって,吐血・下血等が起こり、貧血が進んで、輸血しても出血が止まらず、貧血が改善しない状態が起こり得ます。ゴールが近づいている患者さんにとって,いつまで輸血するのかという選択を迫られることになります。

また、別の部屋では、強力な抗生物質が使用されています。 終末期には抵抗力が落ちるので感染症を起こす可能性があります。 感染症が通常の抗生物質による治療で改善しない場合、より強力な抗生物質を使用することになります。  これには、薬の副作用や薬剤耐性菌誘導の恐れがあります。

私の実父の終末期も肝臓・膵臓・腎臓と次々に炎症が起こり、抗生物質を投与されました。点滴ラベルに表示されているその薬の名前を検索すると、『この薬で救える命がある。』等と説明があり、『かなり強力な抗生物質なんだな。』と知りました。その薬を入れると良くなりますが、またすぐに炎症が起こり、いたちごっこのようでした。父は、「苦しい時間を引き延ばすだけだから、もう止めてくれ。」と申しました。ここでも、いつまで投薬するかは、問題となってきます。

実際、医師は懸命の治療をしてくださいます。「今、こういう症状ですが、抗生物質を投与しますか?」と選択の機会を与えてくださいます。でも、その頃の私は、強力な抗生物質使用も延命治療になり得るとは考えていませんでした。その時は無我夢中で心に余裕もなく、見送った後、父の「もう止めて。」という言葉が心に残り、どういう対応がベターだったかといろいろと調べて、それをお知らせする活動を始めることになったのです。もちろん、これが、延命治療だという確定した治療はありません。その患者さんの状態やご家族の価値観により異なります。抗生物質のどこからが強力かという基準も人それぞれでしょう。

半世紀以上前は、自宅で命を見ていたので、こういうものだと判っている長老のリードがありました。現在社会は、生まれてくる時も旅立つ時も病院で、一般人は、その場面の経験がほとんどありません。

エンディングノート等を利用して、いろんな場面の最悪の状況を想像して、より良い対応にするために、お元気な今、ご家族や周りの方と命の話し合いをしておくことが重要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です