延命治療とは9 心肺蘇生

私は、父の見送りから、命の尊厳を守るため、延命治療の説明絵本「桜のようにいきたい」を作成し、延命治療についてお話をしています。

今回も前回に引き続き、老衰状態になったよしこおばあちゃんの病棟の別の部屋の方の治療のお話です。

老衰期に見える方ばかりがいらっしゃる病棟です。いつ何が起こるか分からないので、多くの部屋のドアは開いていて、中の様子が見えています。

今回は、心肺蘇生の様子です。心肺蘇生とは、呼吸も心臓も止まった時等、心臓マッサージや人工呼吸、AEDの組み合わせで心肺機能を復活させたり、補助したりする方法です。

以前、救命講習を受講しました。倒れている方を見つけた時は、まず「大丈夫ですか?」とか声かけをしながら、肩の辺りを優しくたたき、意識の有無を確認します。意識があるなら、症状を聞きますが、反応が無い場合は助けを呼びます。次に呼吸しているか確認して呼吸していないようなら、心臓マッサージ30回、気道確保して人工呼吸2回の割合ですると習いました。

(救命率)心臓が止まってから2分以内に心肺蘇生を開始出来れば、救命率は約90%と言われていますが、4分後では50%、5分後では25%程度に低下します。このように、心肺蘇生の開始時間が遅くなるほど救命率は低下します。救急隊が到着するまでの間に、その場に居合わせた人たちが適切な心肺蘇生を行えるかどうかが、救命率を大きく左右すると言えます。

心臓マッサージは、いったん止まった心臓をよみがえらせる応急処置です。(普段どおりの呼吸をしていない時は、心臓も止まっているとみなします。)テレビの医療番組で目にしたこともお有りでしょう。やり方としては、胸の真ん中を、重ねた両手で肘を真っすぐに伸ばして、手の付け根の部分にしっかり体重をかけて、胸が少なくとも5cm程度沈むまで、体全体で強く圧迫します。

気道確保・人工呼吸のやり方は、まず、傷病者の額に手をあて、頭を反らします。次に、顎の先端を指先で持ち上げ鼻をつまみ、対処者は口を大きく開き傷病者の口を覆います。そして、息を2回吹き込みます。約1秒ほど、胸が上がるのが見て分かる程度の量を吹き込みます。

AEDは、心室細動と言って心臓が細かく震えて血液を送り出せない不整脈の状態になった時、電気ショックを与えて、正常なリズムに戻す方法です。止まった心臓を再起動させるものではありません。使い方は、まず電源を入れます。すると、音声ガイダンスが始まりますので、そのとおりに操作します。電極パットを右胸の上部と左わき腹に水分や湿布などを取り除いてから貼ります。AEDが自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要か診断します。電気ショックの指示が出たら、ショックボタンを押します。この時、自分や周りの人が感電しないよう患者から離れます。電気ショック後は、心臓マッサージをすぐにを再開します。AEDは2分ごとに電気ショックが必要か解析します。「ショック不要」との音声ガイダンスが流れた時は、心臓マッサージを続けます。

救急隊が到着するまで、心臓マッサージと人工呼吸、そしてAEDの使用を繰り返します。これで、助かって普通の生活に戻っていける方もたくさんいらっしゃいます。

しかし、ここは、老衰期の方ばかりです。80歳代後半を超えると、心肺停止後に救命処置をしても、元の状態にまで回復する方は非常に少ないのです。命を取り留めても、その間、脳に酸素が不足していて意識も回復せず、寝たきりになる方が多いのです。5センチも沈む程圧迫されて、高齢で弱ったあばら骨は何本も折れ、意識は無くても苦しそうにうめき声を上げる方もいらっしゃいます。 

あなたは、老衰期になって心肺停止したら、どうしてもらいたいですか?ご家族はいかがですか?日頃から話し合いをしておきましょう。