延命治療とは10 胃ろう日英比較

私は、父の見送りから、命の尊厳を守るため、延命治療の説明絵本「桜のようにいきたい」を作成し、延命治療についてお話をしています。

前回は、老衰状態になったよしこおばあちゃんの病棟の別の部屋の方の延命治療のお話でした。

元気になって日常生活に戻っていける方にとっては、普通の治療ですが、ここは、老衰期の方ばかり。治るためなら苦しい治療も必要ですが、もう意思表示もできない状態で長生きすることを、この方たちは望んでいたのでしょうか?そして、長生きできてお幸せなのでしょうか?

さて、鼻チューブを引き抜いたよしこおばあちゃんは、危険を回避するために、医師の意見を取り入れたご家族のご要望で、胃ろうを施されました。ご家族は、医師の提案どおりにすると、ずっと病院で面倒をみてくれるのかと思っていましたが、そうはいきませんよね。治療が済んで、症状が落ち着くと退院しなければなりません。自宅に連れて帰ってあげたかったけれど、ご家族それぞれに事情があります。よしこおばあちゃんが95歳ということは、その息子夫婦は70代。世にいう老々介護。70代は足腰が痛いし、持病もあります。その娘はアラフィフで、子育ては落ち着いてきていますが、夫の両親のお世話もしています。という訳で、よしこおばあちゃんは、高齢者施設でお世話になることになりました。

介護施設に移ったおばあちゃんは、口からは食べられないけれど、直接胃に高カロリーの栄養を補給できるので、すごく調子よくなり、髪も顔も艶々、栄養満点です。

家族は、「おばあちゃん、元気になってくれて嬉しいわ。」と言いますが、おばあちゃんは、笑顔の中にも悲しさが見え隠れします。「口から食べられないから、味気ないんだよ。」とボソッと言いました。

医師は、説明の時、「一旦胃瘻をしても、訓練でまた口から食べられるようになる可能性もあります。」と言いました。

実際、50代後半の男性が、脳梗塞になり、そこを乗り越えるために、呼吸は気管切開で人工呼吸器、栄養は胃瘻を施された方がいらっしゃいました。50代ならまだまだ体力がありますよね。脳梗塞が落ち着き、リハビリを経て、呼吸器も胃瘻も外れ、普通の生活に戻った方もいらっしゃいます。

超高齢になると、口から食べると誤嚥といって、誤って食べ物が気管に入って肺炎になるという誤嚥性肺炎やゴクンと飲み込みができないという問題が起こってきます。その解決策として、口を通さずに直接胃に栄養を入れる方法がとられる訳です。今コロナ禍で、人と会って話したり外食したりするのを自粛していますよね。喉も使わずにいると若い方でも機能が弱ってくるので、要注意です。あいうべ体操が良いと言われます。やってみてください。

厚労省の資料に胃ろう造設の日英比較が、 中医協総-2 25年12月11日の資料P33~34に掲載されています。

まず、胃瘻の100万人当たりの造設数はわが国ではイギリスの10倍以上ですし、70歳以上の割合はイギリスの2倍。また、胃瘻造設の原因疾患は、イギリスでは中枢神経疾患、精神疾患・がんが多いのですが、日本においては、誤嚥性肺炎、脳血管疾患、脱水・低栄養、認知症など高齢を理由とする疾患が多くなっています。ご興味がお有りの方は次の項目をクリックしてご覧ください。P33~34です。

Microsoft PowerPoint – ②総-2 個別事項(その6:明細書発行、技術的事項 (mhlw.go.jp)

さて、よしこおばあちゃんですが、95歳。胃ろうを外せる可能性がどのくらいあるのでしょうか?

今回は、よしこおばあちゃんが鼻チューブを引き抜いた後、胃瘻を施され、元気になった様子でした。このまま元気で幸せな日々がいつまでも続くのでしょうか?続きは次回ということにします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です