延命治療とは11 拘縮

私は、父の見送りから、命の尊厳を守るため、いろんな方の体験を組み合わせて延命治療の説明絵本「桜のようにいきたい」を作成し、延命治療についてお話をしています。

主人公のよしこおばあちゃんは、ずっと元気だったけれど、95歳で老衰状態になって、口から食べらなくなりました。本人は、「自然のままにさせて」と言ったけれど、ご家族の意向で鼻チューブを経て、胃ろうを施されました。口からごっくんと飲み込みはできないけど、胃腸はちゃんと動くので、胃へ栄養を直接入れると、消化吸収し、一旦は元気になったと前回お話しました。このまま元気で幸せな日々がいつまでも続くと良いですね?! 今回は、その後をお話します。

胃ろう造設から2年、97歳になったよしこおばあちゃんは、だんだん寝ている時間が長くなり、ついに起きられなくなってしまいました。ひ孫が、「お願い!起きて。ひいおばあちゃん」と泣きながら、おばあちゃんを揺すりますが、反応はありません。このひ孫のセリフが1部の題になっています。

そして、よしこひいおばあちゃんの長男の妻つまり、おばあちゃんも「お母さん、みんな来てくれたよ。誰だか分かる?」と声を掛けますが、もちろん返事はありません。最期の時まで声は聞こえていると言いますが、よしこおばあちゃんも意思表示ができないだけで、聞こえているのでしょうか?

家族は、胃ろうをすれば、ずっと元気でいてくれると思っていたので、とっても悲しく、みんな泣いています。

それから1年経ち、98歳。ずっと寝たきりで動かないので、手も足も、だんだん筋肉は萎縮して関節が固まって動かせない拘縮という状態になります。手足の関節が固まると着替えが難しくなり、股関節が固まると、オムツを変えるのも大変です。ひ孫18歳は、「ねえひいおばあちゃん、幸せなの?そんなに頑張らなくても良いよ。」と泣きます。アラフィフのは、「あの時、おばあちゃんが望んだとおりにしてあげれば良かった!」と後悔にさいなまれます。長男の妻70代は、「長生きの喜びもないこんな姿になるなんて。」と辛さに堪えるのに必死です。長男も涙こそ見せませんが、もちろん辛い後悔の日々です。

筆者は、高齢者にはもう少し間がありますが、パソコン作業などで、長時間ずっと同じ姿勢でいて、立ち上がろうとした時に、筋肉と関節によいしょと力を入れて立ち上がるようになりました。グルコサミンと運動が必要ですね。まあ、私の話は良いのですが、病気やけがで何日か寝ていると、筋肉が瘦せた気がしますよね。骨折してギブスで固定し、外れた時、骨はついても筋肉は痩せて、リハビリしますよね。若い人でも動かさないと筋肉は痩せます。高齢者となって長くなった方が寝たきりとなり、体を動かさないと筋肉はやせて、関節が硬くなるのは明らかなことです。

よしこおばあちゃんは、この後もまだまだ頑張りますが、いずれはその時を迎えます。拘縮して丸く固まってしまった体はまっすぐ横にはなれません。に入る時、ちゃんと入れるでしょうか?上を向けるでしょうか?ふたが閉められるでしょうか?もう、亡くなっているとは言え、悲しい現実があります。

筆者が、セミナーでお話していると、受講者さまのお一人が、「私の母は胃瘻から少し経つと、意識もなくなって拘縮し、床ずれに苦しみながら13年間頑張りました。無理やり生かしている尊厳も無い状態に後悔ばかりの辛い13年間で、亡くなった時は、『やっと楽になったね。』とホットしました。」とおっしゃいました。

あなたがこのお母さまの立場だったら、また、この受講者さまの立場だったらどうでしょうか?いざとなった時、後悔のない対応ができるように家族間でしっかりと命の話し合いをしてくださいね。

よしこおばあちゃんは、この後どうなるでしょうか?続きは次回ということにします。

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