延命治療とは15  ACP

私は、父の見送りから、命の尊厳を守るため、いろんな方の体験を組み合わせて延命治療の説明絵本「桜のようにいきたい」を作成し、延命治療についてお話をしています。

主人公のよしこおばあちゃんは、ずっと元気だったけれど、95歳で老衰状態になって、口から食べられなくなりました。本人は、「自然のままにさせて」と言ったけれど、ご家族の意向で胃ろうを施され、一旦は元気になったものの、3年を過ぎると、意識もなく手足が拘縮してしまいました。7年を過ぎた頃、お世話をしていた長男の妻が夜中に突然死し、家族は悲しみにくれます。そんな中、よしこおばあちゃんも弱ってきて、医師からの治療方針についての確認がありました。

今回は、そのお話しです。「もし、呼吸が苦しくなったら人工呼吸をしますか?もし、心臓が止まったら、心臓マッサージ等の心肺蘇生をしますか?」と医師は尋ねます。家族3人は「絶対しません。」と言います。よしこおばあちゃんの人として尊厳のない悲しい姿に、医師や介護スタッフに「胃ろうを外してください。」とお願いしていたのですから当然の感情です。しかし、医師としては、患者や家族に定期的に治療方針についての意思確認を行う必要があります。その時々の状態により、意思が揺らぐこともありますし、判断が変わることもあります。こんなはずではなかったということがあってはいけませんから、医療介護スタッフ本人家族と一緒に話し合いの場を設けて、内容を記録するのです。

国もACP(アドバンス・ケア・プランニング)人生会議として

「人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み」の普及啓発を進めています。

これは、厚生労働省のACPのリーフレットです。紹介します。

あなたは、「もしものこと」を 考えたことがありますか? (mhlw.go.jp)

『誰でも、いつでも命に関わる大きな病気やケガをする 可能性があります。 命の危険が迫った状態になると、約70%の方が、医療やケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることができなくなると言われています。 自らが希望する医療やケアを受けるために 大切にしていることや望んでいること、 どこでどのような医療やケアを望むかを自分自身で前もって考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することが重要です。』とあります。

よしこおばあちゃんは徐々に弱っていきますが、突然決断を迫られまる場合も多いです。生きていてほしいと思い悩みますが、その時、後悔のない対応ができるように家族間でしっかりと人生会議をしてくださいね。「命の話し合いをしましょう。」と重々しく切り出すのでなく、「今の世の中、何が起こるか分からないよね~。」と軽い感じで始めると話しやすいと思いますよ。

さて、よしこおばあちゃんは、胃ろうから8年、103歳で旅立ちました。ひ孫23歳は、「ひいおばあちゃん、長い間、辛い想いをさせてごめんね。やっと楽になったね。」と泣きます。

よしこおばあちゃんは、8年ですが、私が聞いた一番長い方は13年間です。「意思表示もできずにただ息をしていて、床ずれに苦しめられ13年間。ずっと後悔の苦しい年月が続き、亡くなった時は、いけないことだけど、これで母も私も苦しみから解放されるとホッとしました。」とおっしゃいました。

よしこおばあちゃんの家族は、考えます。『ひいおばあちゃんがこんなことになるまで、人生のゴールの仕方について考えたことはなかったね。 どんなゴールが最も幸せかしら ピンピンころり(PPK)?そもそも、ピンピンころりって何? 』と。その、PPKについては、次回ということにします。 是非、ご覧ください。

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