夫の墓には入りません ―婚姻関係終了届

『夫の墓には入りません』(2019年発行)を読み返してから、垣谷美雨(カキヤミウ)さんにはまっています。垣谷美雨さんは1959年生まれの女性で、私と同世代。著書のテーマは、政治・貧困・ジェンダー・妊活・婚活・終活等と多岐に渡ります。どの小説を読んでも「そうそう。そんなこと言われる。この世代の人はそういう価値観を押し付けるよね。」と共感しきりです。

今回は、『夫の墓には入りません』の感想をお話いたします。

内容は、(「BOOK」データベースより)ご紹介します。

ある晩、夫が急死。これで嫁を卒業できると思いきや、舅姑や謎の女が思惑を抱えて次々押し寄せる。“愛人”への送金、墓問題、介護の重圧…がんじがらめな夏葉子の日々を変えたのは、意外な人物と姻族関係終了届!?婚姻の枷に苦しむすべての人に贈る、人生逆転小説。

とあります。

一番心に突き刺さった言葉は、「つぶしてもいい人間」。その説明としては

「しっかりしていて、我儘をいわない。大人しいが芯は強い。その上相手の気持ちを優先するし、誠実なので、誰だって頼りにしたい。信用に足る人間。」非の打ち所がない人と「褒められているように感じるが、実は便利に使われている。」「どこの会社でもそう。できる人間に仕事が集中する。」

そうそう。全くそうです。

会社では、誠実なだけの人は利用されて、心身共に疲弊しきって辞めていく。親族関係でも『自分さえ我慢すればうまくいく』と我慢する人もいる。特に介護問題では、口は出すけど手も金も出さない人に利用される。配偶者の両親・自分の両親・おじおば・兄弟とみんなから押し付けられて疲弊し、ある日突然撃沈する。そんな画面を多々見てきました。できる人はひとりで抱え込まずに、周りの人々を上手に巻き込んでうまく立ち回る方法を考えたいものです。

がんじがらめな日々を変えたという『姻族関係終了届』は、死後離婚とも言われます。

配偶者が亡くなっても、配偶者の血族との姻族関係は継続するため、姻族関係終了を希望する場合に役所に提出する届出のことで、姻族の同意は不要です

配偶者の相続権や遺族年金受給には影響はありません。また、 姻族関係終了届では、氏や戸籍の変動はありませんから、婚姻前の氏に戻すには、復氏の提出が必要になります。一度姻族関係終了届が受理されると、姻族関係の復活できません。

一番心配なのは今後の扶養義務です。直系血族(父母、子、祖父母、孫など)と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があります。
姻族はこれに含まれないので、嫁と亡くなった夫の親(舅・姑)の関係では、原則として扶養義務を負いません。ただし、特別な事情がある場合のみ家庭裁判所が義務を負わせることができるとされています。この届が受理されれば、配偶者の血族の扶養義務を負うことはありません。

この小説で、夫が亡くなっています。その後、舅姑の相続が発生した場合、嫁は、遺言書で遺贈してもらうか、養子縁組していなければ相続できません。被相続人(亡くなった人)の介護や看病に貢献をした「親族」には「特別寄与料」として金銭請求権が認められるようになりましたが、それが認められる親族は、法定相続人ではない親族なので、遺産分割協議に参加する権利はありません。つまり難しいということです。

終活相談でも「夫の墓には入りません。」という女性は結構いらっしゃいます。夫と同じが嫌というより、死んだ後までそれまでの人間関係の続きで夫の親族と一緒に居るというのが嫌だという方が多いのです。解放されたいのです。単なるお墓の問題ではなく、人間関係の話なのです。あなたのお宅は、いかがですか。

誰しも辛い時不安になることはありますが、あまりに頼り過ぎると相手は重過ぎて逃げ出したくなります。お互いの距離感を保ち、普段から話し合って快い人間関係を続けていきましょう。

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