『長生き地獄』

今回は、終活関連本の紹介第4弾です。

SB新書から2017年に出版された松原惇子著の長生き地獄』 です。

『元気で長生き』が、わが国でのみんなの目標ですよね。私も孫から「元気で長生きしてね。」と、言われます。高齢になってもずっと元気なら良いのですが、弱点のある私は、微妙~なんです。

平均寿命は、戦後の50歳から、70年で30歳以上延びてきました。 ところで、人の体のピークは、いくつ位だと思いますか?20代位ですよね。平均寿命が延びても、ピークは変わりません。下り坂が延々と続くことになるのです。平均寿命=健康寿命なら良いですが、健康でなく、人の手を借りる介護期間が長くなっているというのが現状です。

それにしても地獄とは、いったいどういうことでしょうか? ドキドキしながら、読んでみました。

今回も内容は(「BOOK」データベースより)ご紹介します。

「100歳以上の高齢者が全国に6万5692人に。46年連続の増加」などのニュースを聞くたびに、「もし、自分がそこまで生きてしまったらどうしよう」と、本気でこわくなる。考えても仕方がないことだが、どう死ぬかは、70歳のわたしの最大の関心事だ。わたは、長生きがしたくない。これは本音だ。独居老人が増え続ける日本において、ゴールの見えない長生き人生はまさに地獄だ。人はゴールがあるから、今日一日を頑張れるのではないか。長生きの現場を見ながら、これからの生き方と死に方を考えたい。」

とあります。

う~ん『長生き恐怖論』ですね。 私の周りにも「母には長生きしてほしいけど、自分はそこまで生きたくない。」と言っている人もたくさんいます。

「子どもがいるから安心」とか、「女房より先に死ぬから安心」という方がいらっしゃるそうですが、楽観していて良いのでしょうか?

世帯の形は変わっています。昔主流だった三世代同居世帯は減って、核家族化が進み、高齢化に伴い、老々夫婦の世帯が増えています。そして、やがては、ひとり暮らしが待っています。現在でも。3軒に1軒はお一人暮らしです。生活はグローバル化し、家族は離れて住んでいます。

老々介護(65歳以上の人が、65歳以上の人を介護する。) 認認介護( 軽い認知症の人が、より重い認知症の人を介護する。) 難難介護(難病指定の軽症の人が、より重症の難病の人を介護する。〔私の造語〕)  と大変な状況の方もたくさんいらっしゃいます。

あなたは、どう旅立ちたいですか?  そう、「自然に逝きたい」とおっしゃる方が多いです。「愛する家族に見守られて死ぬ」のが、理想とされます。 でも、ご家族は、「両親には生きていてほしい。」と望んでいます。その時がくると狼狽して、「先生、どうか命だけは助けてください。」と懇願する家族が多いのです。それが、愛する両親を苦しめてしまうとも考えずに。そして、ただ息だけさせられることになるのです。その姿を見るに忍びなくて、ご家族は、面会にも来なくなります。

自然にと希望するなら、その気持ちをしっかりとご家族に理解してもらっておく必要があります。

かえって、ひとりで静かにその時を迎える方が、楽かも知れません。ただ、その後、できるだけ早く見つけてもらう必要がありますので、ご近所付き合いとか、何かの準備は重要課題ですよね。

自然死のすすめ

終活関連本の紹介第3弾です。

幻冬舎新書から出版された中村仁一著の大往生したけりゃ 医療とかかわるな 「自然死」のすすめ』 です

我が国の医療は、早期発見早期治療が、浸透しています。このタイトルは、それを真っ向から否定するもので、びっくりしますよね。どういうことかなと読んでみました。

今回も内容は(「BOOK」データベースより)ご紹介します。

『3人に1人はがんで死ぬといわれているが、医者の手にかからずに死ねる人はごくわずか。中でもがんは治療をしなければ痛まないのに医者や家族に治療を勧められ、拷問のような苦しみを味わった挙句、やっと息を引きとれる人が大半だ。現役医師である著者の持論は、「死ぬのはがんに限る」。実際に最後まで点滴注射も酸素吸入もいっさいしない数百例の「自然死」を見届けてきた。なぜ子孫を残す役目を終えたら、「がん死」がお勧めなのか。自分の死にどきを自分で決めることを提案した、画期的な書。 』とあります。

私事ですが、お正月に還暦同窓会がありました。この年になると、ご多分に漏れず、話題は、主に3つ。1.孫のこと、2.親の介護のこと、そして3.自分の病気のことです。

「私、○○がんだったの。」「僕は○○がんで今度手術するんだ。」という声があちこちから聞こえました。がん適齢期になったんだなあと感じます。でも、この年なら、まだきちんとがんと向き合って治療しないといけませんよね。

先日は、知人の86歳のお元気なお父様、医師から「90代になっていれば、手術を勧めないけど、まだ80代だからがんの手術をしましょう。」と勧められて、手術されました。今まで楽しんでされていた畑仕事はできなくなり、QOLは下がりましたが、日常生活は普通にされているとのことで、良かったです。

この本では、がん治療についてもさることながら、高齢者への過剰医療、延命治療についても触れられています。病院の医師は、病気を治そうと懸命に検査・治療してくれますが、中村医師は、老人ホームの付属診療所長ですから、高齢者の負担になることは極力せずに、穏やかな死を迎えさせてあげたいというお考えです。私は、こちらが興味深く、この本は、延命治療を考えるためのバイブルとなりました。

この度の新型ウィルス感染拡大の初期に、「日本人の早期発見早期治療の考えによる通院で、院内感染が広がる。」と危惧されました。そのため、老化による症状で我慢できる方や、軽症で自分の治癒力で治そうと、病院に行くのを控えている方が増えて病院の経営状態が………と報道されています。そして、「受診を控えたために、症状が悪化する人もいる。」とも言われます。

薬には副作用が付き物です。高齢者の中には、いろんな診療科から合わせて1日20種類もの薬を服用されている方もいらっしゃいます。個々の薬が作用しあって、副作用も相当だと想像します。そういう方は、減薬すると調子が良くなったという話もよく聞きます。

通院も薬も闇雲に減らせば良いというものではありませんが、この機会に、適度な治療・投薬を心掛けて、穏やかなゴールを目指したいものです。