延命治療とは2 老衰期の対応

「桜のようにいきたい」 1部の『お願い お起きて!ひいおばあちゃん編』

この説明絵本は、数人の実話をベースにアレンジして、ひとつにまとめたものです。その核となるのが、よし子ひいおばあちゃんです。よし子おばあちゃんやその他の登場人物は仮名になっています。

ひい孫をいつも優しく遊んでくれていたよし子おばあちゃんですが、95歳となり、老衰で食べられなくなって弱ってきました。お家で静養していましたが、かなり衰弱してきたので、家族が見かねて入院させました。

手には点滴が入っていて、痛々しいです。これは、抹消静脈栄養と言って、水分と栄養補給目的で、手や足の細い静脈から栄養を入れます。細い静脈に高濃度の糖質を入れると、血管痛や静脈炎を起こしてしまうので、高エネルギーを投与することはできません。概ね2000キロカロリ-必要なところ、約1000キロカロリ-の摂取しかできないので、必要カロリーには足りません。そして、血管も弱り、だんだん点滴が入りにくくなり、針の位置を変えます。針の刺し替えで内出血が起こり、手足が紫色になる場合もあります。そして、血流が滞りいずれ入らなくなります。抹消静脈栄養で延命できるのは、およそ2~3か月です。

医師は、「老衰の状態で、このままだと充分な栄養を摂れないので時間の問題です。」と言いました。

老衰期に口から食べられなくなった時の主な対応は、大きく分けて3つです。

1. できる限り延命をする。2.手足からの点滴で様子を見る。(今よし子おばあちゃんに施されています。)そして、3. 何もしないで見守る。これは、本当に大まかに分けています。実際は、この3つの間に数限りない選択肢を示されます。その都度、本人・家族・医療者との話し合いで、方針決定されます。「いざとなったら考える」という方は多いですが、いざとなった時には、説明を聞いてもなかなか平常心ではいられません。事前に知識を持って、命の話し合いをしておくことが大切なんです。

ひいおばあちゃんは、胸の前で両手を合わせ、拝むように「もう何もしてほしくない。そっと自然のままにさせておくれ。」と言いました。

この世に生まれてきた以上、必ず終わりは訪れます。終わりがくるから、一日一日を大切に生きるのです。

「食べないから死ぬのではなく、もう必要としていないから体が受け付けないのだ。」と言われます。

必要としていない体に不必要な水分を入れると、痰ができます。この頃になると、自力で痰を出せず、喉がゴロゴロしますので、チューブを突っ込んで、痰吸引をします。これが、とても苦しいのです。

何もせずに自然に進むと、飲食できないので、脱水状態となりますが、うつらうつらとしていて、苦しくはないそうです。私は、その状態になったことはありませんが、生死に関わる多くの医師が書籍に記されています。いずれみんな死んでしまうので、老衰で自然にという場合は、そんなに辛くはないようです。

一方、このご家族はどんな気持ちでしょうか?今まで命の話し合いをしたことはありません。優しいひいおばあちゃんの死が目前に迫って悲しく、以前のおばあちゃんに戻って笑顔を見せてほしいいう願いがあります。

ひいおばあちゃんは、「自然のままに」と頼みました。ご家族はどのような決断をするのでしょうか?よし子ひいおばあちゃんの運命やいかに?

次回に続く

延命治療とは1 プロローグ

今回から、私、大西が作成した「桜のようにいきたい」から、延命治療を説明して参ります。

私は、金融機関に31年間、勤務していたので、お金が終活の中心と思って、終活のお知らせ活動を始めました。その後、83歳だった父が倒れて、今までの良くなって帰る入院の状態とは全く違う悪い状態でした。本人も家族もお断りしているにも関わらず、担当医は、「まだ生きられますよ。」と、父のその状態では、延命治療だと思う胃ろうを強力に勧めてくださいました。医師は患者の命を救うのが仕事なので、医師からすると当たり前のことですが、QOL(人生の質)を重視する私たちの思いは違っていました。 

そこで、自分の命は自分で決めたいと、延命治療意思表示カードと前もって知識を得るための説明絵本を作成しました。そして、今は、お金と命の尊厳を両輪として、終活をお知らせしています。

今日は、この説明絵本のプロローグから説明します。

ところで、「命は何よりも大切」とよく言われます。では、命の何が大切なのでしょうか? 

長さですか?「どんな形でも良いから、1分1秒でも ただ長く生き延びる」ということ=時間でしょうか?

質ですか?「多少短くなっても良いから、自分らしく尊厳をもって生きること」=生活の質(QOL)でしょうか?

ご自身はどうですか?それでは、愛するご家族の場合はどうしてあげたいですか?

ご自身とご家族は同じですか? 違う方は、ご自分が、してほしくないことを愛するご家族にするのですか?

延命治療の基準は、人により異なります。

父の担当医は、「胃ろうは延命治療ではなく、栄養補給です。」とおっしゃり、私たちとは意見が異なり、人によって、延命治療の基準が違うと知りました。

それでは、延命治療とは何でしょうか?「これから延命治療を始めます。」という治療はありません。同じ治療名でも、治る人にとっては普通の治療で、『もう治る見込みもなくなり、旅立ちを待つばかりの状態で、それ以上治療しても苦しい状況を引き延ばすだけ』となった場合の治療が延命治療です。

延命治療意思表示カードの裏面に延命治療になりうる治療名を入れて、受診の希望について意思表示できるようにしています。

もちろん、治る病気やケガは、きちんと治療しなければなりません。

この冊子に出てくる延命治療は、先ほども書きましたが、『もう治る見込みもなくなり、旅立ちを待つばかりの状態で、それ以上治療しても苦しい状況を引き延ばすだけ』となった場合の治療のことです。当然、治療すれば治る治療を拒否するものではありません。

この説明絵本は、よし子おばあちゃんが、老衰で食べられなくなり、入院したところから延命治療が始まります。

何人かの実体験を元に、治療名の説明 ・本人の体の変化 ・家族の気持ち を描きました。

いずれ訪れるご自身の旅立ちの仕方を家族や医師に委ねるのではなく、自分らしく自分の望むように迎えるために、ことが起こってあわてるのでなく、前もって知識を持って、意思表示して、ご家族や周りの方にお話しして分かってもらいましょう。その命の話し合いの一助として、販売もしていますので、ご利用くださいませ。

次回に続く。